ユカリア STORIES
Withコロナにおけるパートナー病院の取り組み~川口工業総合病院
※2022年5月9日株式会社キャピタルメディカは「株式会社ユカリア」に社名変更しました。
こんにちは、キャピタルメディカです。
医療やビジネスのゲンバから様々な情報を発信する『キャピタルメディカSTORIES』。
冊子『EUCALIA LIVE』(ユカリアライブ)の原稿を抜粋・再編集し、それぞれのパートナー病院がコロナ禍のなか、どのような病院経営・運営をしてきたのかをお届けしする、パートナー病院紹介シリーズ。
今回は埼玉県の「医療法人 新青会 川口工業総合病院」です。
※情報はすべて2021年10月時点のものです
医療法人 新青会 川口工業総合病院
[所在地]埼玉県川口市青木1-18-15
[診療科目]内科、循環器内科、神経内科、消化器内科、消化器外科、外科、血管外科、乳腺外科、整形外科(人工関節センター、スポーツ関節鏡センター併設)、耳鼻咽喉科、眼科、泌尿器科、皮膚科、麻酔科、リハビリテーション科、放射線科、救急科
[病床数]199床(HCU8・一般153・地域包括ケア38)
[関連施設]川口工業病院乳腺外科診療所
[ホームページ]http://www.kogyohsp.gr.jp/
川口工業総合病院は埼玉県川口市にあり、約60年の歴史のある病院です。工業とついているのは創立が川口鋳物工業組合であったためで、法人化の際にそのまま残したものです。病院は整形外科、内科、消化器外科が中心で、特に整形外科はスポーツ整形を得意としています。内科は循環器、神経内科、消化器内科が主体です。
2020年1月より武漢から拡大したCOVID-19は、2・3月は当院でも他人事でしたが、4月になり3月31日に退職した医師がCOVID-19で入院したとの報告からが大変でした。外来患者の追跡調査・外来診療の消毒閉鎖・濃厚接触者確認・自宅待機と、保健所と連絡を取りつつ、他病院の対応も参考に当院の対処を決めました。医師退職に伴い、一時的に病院機能が低下しましたが、特に感染者も出ることなく4月15日には通常業務に戻りました。
しかし、4月18日内科病棟内で陽性者が確認され、最終的に患者11人、職員7人が感染し、クラスターと認定されました。元より感染症専門医はおりませんので、保健所に相談するのですが、明確な指示もない状態でした。幸い、医師を派遣して頂き、ゾーニングの徹底として内科病棟を閉鎖しレッドゾーン構築、HCUを閉鎖しグリーンゾーンの構築などを行いました。深刻なPPE、マスク不足も各所から応援して頂きました。感染者の中には元々重症で延命処置を希望されない方もおられたため看取りまでの診療もし、2名の方は重症化したため転院されました。内科医の全員が濃厚接触者となり、院長1人残し自宅待機としました。当時は退院基準がPCR検査陰性2回だったためなかなか退院が決まらずに苦労しました。
また、結果的にはCOVID-19 受け入れ病院となりましたが、その際も内科医師の反対があり、退職する医師もいました。報道では、今後は、川口工業総合病院はCOVID-19のみを受け入れる病院となり、通常の医療は行わないなどと言われ、問合せが多数あり、否定するのに大変でした。
クラスター後は5月の連休明けから一部診療を開始し、3週目にはほぼ通常に戻りました。その後はノウハウも蓄積し、感染病棟と通常病棟は交通なく運営され安全に診療が継続されています。クラスターが起きた4月中旬から5月の連休明けまで、あまり記憶にないぐらい忙しく、なぜかCOVID-19にもかからず、検査しても抗体もできず、運よくクラスターを収束することが出来ました。一番大変であったであろう看護師さん達からは退職者もでず、非常に協力的であったことには感謝しても仕切れません。経営的には大ダメージで補助金で一息ついています。心配なのは感染が収まった後と思っています。
組織風土の醸成を目指して
当院は、経営の安定化、職員の成長、整備されていない個所の業務構築および効率化が必要であると思っています。当院の強みと弱みを明確化し、すべての職員が協働を意識し主体的に動く組織風土の醸成が必要であると感じております。当院の職員にどこかしらの濃淡はありますが、共有する課題に行動を起こしてくれます。油断することなく院長をはじめ職員とともに、上昇気流を発生させ、気流に心を乗せながら、前に、前に進んでいこうと考えています。
2020-2021 所感
川口市は、荒川を東京都北区と挟む埼玉県最南端、県境の中核市であります。江戸時代より発展を続けた鋳物産業は1970年代半ばをピークに衰退し、現在は東京のベッドタウンの側面が強く、人口約61万人の6.5%が外国出身者と全国でも特異な人口構成です。
当院は川口工業総合病院内に2015年より間借り診療を始め、2018年に隣接するマンションの1・2階に乳腺外科診療所として新規開設しました。診療、経営理念はホームページをご参照いただければ幸いです。入院、手術は総合病院で行い、18名のスタッフで診断、薬物治療、緩和ケアまでを守備範囲としています。病理診断に秋山太先生、超音波検査に佐久間浩先生とこの領域の第一人者を非常勤招聘し、診断においては国内最高レベルの品質を誇ります。
SWOT分析では地域での求心力、スタッフの理念共有、職域検診の寡少等の点においてstrong、opportunityを未だ生かしきれておらず、そのことが逆説的にweakとなっています。組織が個人の集合体である以上、個人の成長・スタッフ間の緻密なコミュニケーションの熟成がプレーイングマネージャーである筆者に課せられた最重要命題です。
2020年は跳梁跋扈する新型コロナウイルス感染症により乳癌手術件数も停滞せざるを得ませんでしたが、延べ診療数では前年比11%増と堅調でした。これは、1月から取り組んだパンデミックに対するスタッフ教育、意識改革、診療環境整備を徹底したことが具現化し、受診者の安心感を得たものと自負します。
2015年から約4年間に90回以上行ってきた市民講座も現在中断を余儀なくされていますが、オンラインでの開催も計画中です。さらに、本年度は東大発ベンチャー企業が開発した全自動超音波診断装置に関する200症例の特定臨床研究を1か月間で完了し、月1400人以上のワクチン接種も進行中です。
新規開設から3年目に入り、改めて理念を忘れることなくPDCA回路を回し続け、その成果を患者さんと分かち合うべく人事を尽くす決意です。
次回は埼玉県の「医療法人 武蔵野総合病院」です。
ゲンバからは以上です。