虎の巻その1
病院経営~虎の巻~始まります!(上)
はじめに
こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。
今回病院経営コラムを開始するにあたり、「虎ノ門発の虎の巻、ということで虎にちなんだネーミングでお願いします」という広報からの要望(ムチャぶり)でこのネームになりました。
これからよろしくお願いします。
ユカリアは今年の2月に創業15周年を迎えました。
それまでに全国250以上の医療施設の課題を抽出し、経営改善、事業再生の道のりを検証してきました。さらに100施設ほどの病院経営支援を手掛けてきました。
今後も事例などを交えながら病院経営の基本からお話ししていきたいと思っています。
その前に、まずは現在の医療および病院経営を取り巻く環境を紹介していきたいと思います。
当コラムは医療業界にこれまでかかわりがなかった方でもわかることを目指していきますので、医療従事者の方には「釈迦に説法」なことも多いかもしれませんが、最新のデータを用いていきますので、ご自身の知識のアップデートにお役立てください。
増え続ける日本の医療費
突然ですが、問題です。
「日本の社会保障費における医療費の割合はどれくらいでしょうか?」
答えは 32.8%
「3割以上もある」と思いましたか?
それとも「思ったより少ない」と思いましたか?
さらに注目していただきたいのはその額です。
2017年度の日本の社会保障給付費は120兆2,400億円、対前年度増加額1兆8,300億円。伸び率は1.6%で初の120兆円台に達し、過去最高となりました。
そのなかで医療費は39兆4,200億円となっています。(※1)
社会保障費は2025年には約150兆円に達する予測で、医療・介護の伸びがさらに大きくなるといわれています。
※1 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所 平成29(2017)年度「社会保障費用統計」の概況より
日本の病院の4割以上が赤字経営
医療費が増えているということは病院経営も視界良好なのでは?
そう思った方、残念ながらそうはありません。
2018年度の赤字病院割合は42.7%、減益病院は47.3%
そのうち 病院の本業である医業による利益だけでみると、赤字病院割合は55.3%、減益病院は48.3%となっています。
前年の2017年と比べてもほぼ横ばいの数字です。(図①)
医療費の増加は、寿命の延伸、高齢化、医学・医療の進歩、疾病構造の変化、等の自然増、さらには、病床数の多さ、長い在院日数、薬剤・医療材料価格が高い、検査や薬剤使用量の多さ、受診回数の多さ、等々が要因として上げられます。
中でも深刻なのが公立・公的病院です。厚生労働省「平成29年病院運営実態分析調査」の報告によれば、2017年度には94.96%が赤字という結果となっています。
このように病院の経営は大変厳しいものとなっています。
まとめ
- 日本の社会保障の3割強を医療費が占める。
- 日本の病院の4割強が赤字経営で横ばい傾向である。
- 公立・公的病院に限ると9割以上が赤字経営である。
昨年、厚生労働省より公立・公的病院の再編案が提示され大きな論議を呼んだのも記憶に新しいところです。公立・公的病院では、民間病院では経営上の問題で負担をするのが難しい、高度医療を提供したり、いわゆる政策医療や不採算医療等を担う重要な使命があります。しかし、いつまでも赤字経営が許されるわけはなく、自浄努力が必要であり、各地の実情をふまえ黒字化できる体質を検討すべきと考えます。
次回は、医療施設数の推移について見て行きましょう。
「病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!