虎の巻その5
病院事業5つの特性(上)

2020108

はじめに

こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。病院経営コラム「病院経営~虎の巻~」。前回、医療機関の対価は「診療報酬」という形で細かく決められているとお伝えしました。
ビジネスにおいて、製品やサービスの価格相場はあれ、全国一律なことは稀なのではないでしょうか。このように我々が外から病院を見たときに、一般事業会社と違って見える点が複数あります。病院ならではの事業構造の特徴を5つにまとめてみました。

【病院事業5つの特性】
制約の存在と制約の変化
労働集約型かつ固定費(設備投資先行)型のビジネスモデル
「私」であり「公」である
専門家集団でコンセンサスが取りづらい
経営者意識の欠如


それではさっそく①から見て行きましょう。

特徴① 制約の存在と制約の変化

【診療報酬】
4回でお話ししたように、診療報酬の改定は2年ごとに行われ、医療の進歩や直近の経済状況等とかけ離れないよう見直しをしています。
さらに長期的な国の医療政策の方向性が示されているものでもあります。その方向性を読み取り、短期間で変化する制約に振り回されことなく、長期視点で病院経営をしていく必要があります。

【人員配置】
「適正な医療を実施するためには一定水準以上の人員を確保する必要がある」という観点から病床を有する病院では、医療従事者の「標準配置基準」が医療法により定められています。
人件費を減らしたいからといってこの基準を満たさない人数で運営することはできません。
看護配置を例にあげてみると、「71看護」と呼ばれるものは患者7人に対し、看護師が1人、同様に10対1看護は患者10名に対して、看護師が1人ということになります。どちらも急性期医療を担う看護体制ですが、7対1のほうが診療報酬が高くなります。現在病床過剰が指摘されていて、2020年の診療報酬改定では「71を維持するための要件」が厳しくなりました。それにより診療報酬が低い配置基準への転換を促しています。

【病床】
そもそもですが病床の数自体が、厚生労働省の医療計画に基づき総量規制されています。
それが地域の既存病院の病床の既得権益化につながり、新規参入を阻害していると言われています。

特徴② 労働集約型かつ固定費(設備投資先行)型のビジネスモデル

病院数の減少に伴い病床数にも変化が表れています。厚生労働省では、これまでの医療提供体制の歴史を以下の3つの時代区分に分類しています。
①医療基盤の整備と量的拡充の時代(1945年から1985年まで)
②病床規制を中心とする医療提供体制の見直しの時代(おおむね1985年から1994年まで)
③医療施設の機能分化と患者の視点に立った医療提供体制の整備の時代(おおむね1992年以降)

【人件費】
病院経営における最大コストは人件費です。先に述べた「標準人員基準」により簡単には減らせません。ゆえにコントロール可能な「変動費」的な部分は限定的となり、損益分岐点が高い固定費型収益構造となっています。

【設備投資】
医療機器は総じて高額です。例えば、人間ドッグ等で利用した方もいると思いますがMRIMagnetic Resonance Imaging)と呼ばれる磁気共鳴画像診断装置、こちら大手メーカーA社の希望小売価格は8億円以上です。購入後の保守費用もかかります。

※イメージ

【建築コスト】
ユカリアは病院建築に関する部門も有していますが、建築コストは引き続き増加傾向にあります。総務省の「公立病院経営改善資料」によると一般病院を建設する際の「定員1人当たり建設費」は、2018年度には5年前に比べて69.3%も増加しています。300床の一般病院を新設する場合、5年前に比べて建設費だけで25億円程度のコスト増になります。さらに公立病院は民間病院の倍以上のコストをかけている例もあるようです。

まとめ

  • 法律による制約が多く参入障壁が高い
  • 固定比率が高く、変動費率は極めて低いため、ハイリスクハイリターンである
  • 建築や機器などの初期設備投資が大きく、事業撤退の損失が大きい事業である

長くなったので、病院事業の5つ特性(下)へ続きます。
「病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!

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