虎の巻その16 病院経営におけるマーケティングの視点(上)

2021415

はじめに

こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。病院経営コラム「病院経営~虎の巻~」。
前回までは病院のコストについてお伝えしてきました。
今回は、増収対策に根幹である医療経営におけるマーケティングの視点ついてお伝えしていきたいと思います。

まず病院が存在する地域をマクロの視点で把握し、実務に落としていくマーケティングの分析について説明します。

病院におけるマーケティングとは

患者を集める手段としては、ホームページ、駅や電信柱などの看板広告が思い浮かぶと思います。
それ以外にも地域での講演会、学会発表など多岐に渡ります。

しかし、やみくもにそれらを実施したとしても、ターゲットを把握し効果的に訴えることができる内容でないと意味がありません。
実際に、SEO対策やSNSInstagramTwitterなど)のコンテンツ運用に苦慮している例も少なくありません。

病院経営のおけるマーケティングでは、マクロマーケティングで外部環境を把握することは非常に重要です。
ここで言うマクロは、病院でコントロールが不可能な外部の環境のことを指します。

定量分析と定性分析がありますので、順番に説明していきましょう。

マクロマーケティング ~外部認識・定量分析~

外部認識・定量分析とは、基本的には、対象病院の「医療圏」(※1)をマクロマーケティングの観点から把握し、どこにチャンスもしくはリスクがあるかを的確に認識し、将来戦略作成の材料にする、という考え方です。

1 医療圏
医療を効率的に提供するために都道府県が医療計画に従って設定する地域。一次医療圏はおおむね市町村単位、二次医療圏は一体の区域として入院医療を提供することが相当である単位、三次医療圏は都道府県単位。

まず、医療マーケットの現状(人口/年齢構造/施設状況/患者状況/疾患構造)を把握し、医療マーケットの将来分析を行います。必要なデータは公開データから入手可能なもので、以下は定型的なものの例です。

  • 患者調査、病院報告、医療施設調査(厚生労働省)
  • 将来推計人口データベース(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 保健統計(各都道府県)

これらの情報を利用することで(図①)のように医療圏及び対象市町村の将来患者推計が計算可能となります。地域にどのような患者が存在しているのか、どのように増減するのか、さらにどの診療科・疾病・年齢で増減するのか、が把握できます。

(図①)医療圏及び対象市町村の将来患者推計

注意することは、受療率(※2)は年齢毎、疾病毎、地域(都道府県)毎に違うということです。
それらの計算を誤ると全く違う結果が算出されることがあります。

2 受療率
特定の日に疾病治療のために、すべての医療施設に入院あるいは通院、又は往診を受けた患者数と人口10万人との比率。病院・診療所に入院又は外来患者として治療のために通院した患者の全国推計患者数を把握し、「受療率」を算出する。

診療圏分析・集患構造分析 ~自己認識・定量分析~

続いて、外部環境を正確に把握した上で、入院患者、外来患者、救急患者、紹介患者の視点で各科目別に対象病院の「診療圏」(※3)の状況をつかみます。それぞれを患者の絶対数、患者シェア(人口対比患者発生率)の視点から「診療圏」の状況と「集患力」の状況を把握します。(図②)

3 診療圏
病院の来院予測患者数。おおむね一次診療圏が約0.5km圏内、二次診療圏が約1km圏内。

(図②)通院患者の居住地割合

絶対数分析(科目別)
入院患者/外来患者/救急患者/紹介患者
シェア分析(科目別)
入院患者/外来患者/救急患者/紹介患者

必要なデータ例は以下です。

  • 患者データ(1年間の新規入院患者・初診外来患者データ)

必要項目は住所/入院経路/退院経路/紹介元/紹介先

まとめ

  • 病院マーケティングではマクロマーケティングで外部環境を把握することが大事
  • 外部認識・定量分析で病院の「医療圏」を把握しチャンスもしくはリスクを的確に認識し、将来戦略作成の材料にする
  • 自己認識・定量分析で病院の 「診療圏」の状況をつかむ

病院経営におけるマーケティングの視点(下)では、外部認識・定性分析についてをお伝えします。
病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!

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