ユカリア、フロンティア・マネジメント、日本ファンドレイジング協会 医療・介護領域の「インパクト加重会計」の実証において協業開始
株式会社ユカリア(本社:東京都千代田区、代表取締役:古川淳、以下:ユカリア)と、フロンティア・マネジメント株式会社(本社:東京都港区、代表取締役、共同社長執行役員:大西 正一郎、代表取締役 共同社長執行役員:松岡 真宏、以下:フロンティア・マネジメント)、特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会(所在地:東京都港区、代表理事:鵜尾 雅隆、以下:JFRA)は、医療・介護領域のインパクト加重会計の実証において協業を開始しました。
ユカリアでは、展開する医療・介護事業を対象に、JFRA協力のもとインパクト投資の評価手法を用いたIMM(Impact Measurement and Management)と呼ばれるインパクト測定・マネジメントを実施しています。このIMMを基に、フロンティア・マネジメントとユカリアは、共同でインパクト加重会計(※)等の手法を用い、非財務情報を含む社会的インパクトを貨幣価値に換算するプロジェクトを推進することといたしました。
ユカリアがもたらす社会的インパクトを客観的かつ定量的に可視化させ、各ステークホルダーとより強固に連携しながら、社会的インパクトの最大化に向け事業推進することで、ビジョンである「ヘルスケアの産業化」の実現を目指します。
※インパクト加重会計(Impact Weighted Financial Accounts)
損益計算書や貸借対照表などの財務諸表に記載される項目で、従業員、顧客、環境、より広い社会に対する企業の正と負のインパクトを反映させることにより、財務の健全性と業績を補足するために追加されるもの。投資家や経営者が、自社の利益や損失だけでなく、企業が社会や環境に与える広範なインパクトに基づいて、十分な情報を得た上で意思決定を行うことができるような統合的な業績を示すことを目指している。
出典:一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(Social Impact Management Initiative: SIMI)
https://simi.or.jp/grc/impact-weighted-financial-accounts-the-missing-piece-for-an-impact-economy/
背景と役割
世界規模で多様化・複雑化する社会課題に対して、人々や地球によりよい影響を与える社会性を企業価値として捉える企業が増えています。また、財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的及び環境的インパクトを同時に生み出す企業や事業へ投資する「インパクト投資」の市場規模も拡大を続けています。そのような流れの中、企業が社会に対する説明責任を果たすために、様々な手法を用いて、企業が生み出す成果(アウトカム)を「見える化」する動きが活発化しています。
JFRAは、日本のインパクト投資を牽引するGSG国内諮問委員会(The Global Steering Group for Impact Investment)への参画や、IMMと呼ばれるインパクト測定・マネジメントに関する研究・事業開発、日本社会をインパクト志向に変革していくための政策提言や啓発活動を行っています。
フロンティア・マネジメントは、世界全体の持続可能性に貢献する「ユニバーサルオーナー」として日本企業が取るべきESG戦略の策定、実行支援をしています。その手法のひとつで、昨今話題のインパクト加重会計を日本企業に取り入れる活動も推進しています。
ユカリアはミッション「変革を通じて医療・介護のあるべき姿を実現する」のもと、病院経営・運営支援及び高齢者施設運営を中心に、ヘルスケアバリューチェーンにおいて広範囲な事業を展開してビジョンである「ヘルスケアの産業化」の実現を目指しております。
2023年より、JFRAの知見を活かしたIMMを通してユカリアが最終的に目指す社会へ効果や影響(アウトカム)の実現に向けた道筋を体系的に図示化したロジックモデルを作成し、インパクト評価モデル検証のためのインパクトデータを収集・分析、現時点での評価まで実施しました。
この度は、フロンティア・マネジメントの知見を活かしインパクト加重会計等の手法を用い、ユカリアの非財務情報を含む社会的インパクトを貨幣価値に換算することによる「見える化」の実証に取り組みます。
フロンティア・マネジメント株式会社 コメント
近年、ISSBによる「IFRSサステナビリティ開示基準」の公表などの国際的なフレームワーク/基準の整備に伴い、非財務情報の開示による企業価値への影響が高まっています。
今般のユカリア、JFRA、当社共同の実証研究では、TCFD等に準じた自然資本(気候変動リスク等)に対する事業活動の影響を可視化することに加えて、ユカリアの主力事業である医療機関の経営支援及び投資活動、ならびに地方医療への参加による経済効果を測定して、人的資本や社会関係資本へのインパクトを定量化していくことを目指しています。
本プロジェクトを通じて、非財務情報と企業価値のインテグレーションと我が国の上場企業の企業価値向上の一助となれるよう努めてまいります。
認定特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会 コメント
日本におけるインパクト投資残高は、2022年度で5兆8,480億円(前年は1兆3,000億円超)であり前年比4.4倍と急速に拡大しています。
市場の拡大に伴い投資家、事業者ともにIMMの必要性も高まっています。
これまでユカリアの事業が創出するインパクトを可視化するロジックモデルや評価指標などの開発を行ってきました。さらに今回フロンティア・マネジメントとの協業により実証する「インパクト加重会計」は世界的にも事例の少ない大変意欲的かつ先駆的な取り組みになります。ユカリアのように高いインパクト志向を持ち戦略的にIMMを企業経営に統合する企業が増えることはインパクト投資市場のさらなる健全な発展に貢献すると思います。
今後の展望
日本のインパクト投資が黎明期であり今後更なる成長が見込まれる中、約20年事業活動を行ってきたユカリアがインパクト志向の高い企業として広く認知され、成長していくことで、インパクト業界のさらなる発展に貢献してまいります。
また、中長期的には、ユカリアの事業が創出するマクロ経済や日本の社会保障費に対するポジティブ・インパクトを可視化するような実証研究にも取り組むことも検討しております。
ユカリアが考える「5つの社会課題」とセオリーオブチェンジ
ユカリアでは、ミッション「変革を通じて医療・介護のあるべき姿を実現する」ため、医療・介護領域の社会課題を5つのテーマに分類しています。
① 医経分離
医療従事者が病院経営も担うことが、適切な病院経営に繋がるとはいえない状態のため、国内の医療機関の半数以上が赤字経営となっている。それを、医療と経営の役割をわける「医経分離」を導入することにより、発展性・持続性のある医療法人経営を実現する。
② 病院運営の最適化
個人最適や属人化等により変革を好まない不活性な組織となっている状態のため、医療従事者の働き甲斐やモチベーションが低くなっている。それを、業務の標準化・オペレーションの最適化により、医療従事者が活き活きと働ける病院環境を構築する。
③ 患者起点のVBHC(Value Based Health Care)の追求
プロダクトアウト発想の製品・サービス開発が先行している状態のため、最終受益者である患者へ提供する付加価値も低くなっている。それを、患者への付加価値を追及することで、医療の質向上に尽力する病院が正当に評価される産業を実現する。
④ 地域包括モデル
厚労省が提唱する地域包括ケアシステムが進まない状態のため、地域で支えきれない高齢者が増加している。それを、民間が主導して医療から介護までシームレスな連携モデルを構築し、地域医療構想にも積極的に関与することで、地域で高齢者を支えぬくことのできる環境を提供する。
⑤ 現場に適したDX化
医療・介護業界全体のITリテラシー不足もあり、他業界と比較してデジタル化が遅れている状態のため、適切な病院経営や運営の最適化も進まない。それを、医療・介護業界の現場が自らデジタル化を促進することで、患者・医療従事者ともに就業体験・受診体験の革新的向上を実現する。
この5つの社会課題を解決するため、各ステークホルダーと連携し、ビジョン「ヘルスケアの産業化」を実現してまいります。
フロンティア・マネジメント株式会社
フロンティア・マネジメント株式会社は、2007年に設立いたしました。当社が目指すものは、経営者の視点から企業価値を高める総合的なコンサルティングファームです。ビジネス・金融・会計・法律など、各分野のエキスパートが1つのチームを結成し、事業成長・事業再生をバックアップしてまいります。
- 所在地 : 東京都港区六本木3-2-1 住友不動産六本木グランドタワー41階
- ホームページ : https://www.frontier-mgmt.com/
日本ファンドレイジング協会
日本ファンドレイジング協会は、「寄付・社会的投資が進む社会の実現」を目指し、民間非営利組織のファンドレイジングに関わる人々のための認定ファンドレイザー資格制度や、社会的投資の促進に向けた研究・事業開発を行っています。
- 所在地 : 東京都港区新橋5-7-12 ひのき屋ビル7F
- ホームページ : https://jfra.jp/