ヘルスケアの産業化で、
課題解決先進国への一歩を踏み出す<前編>

202429
EUCALIA IDENTITY

ユカリアがヘルスケアの産業化を進めていくためには、どのような視点が必要でしょうか。
医療業界の抱える課題は、日本社会が抱える課題と不可分と考えます。
学問の世界にとどまらず、知を社会課題の解決につなげようという姿勢のもと、新たな社会モデルやビジョンの提案、産業の創造など、様々な活動を展開されている小宮山先生に、代表取締役の古川淳がお話を伺いました。


【ゲストの小宮山 氏ご紹介】

1972年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了後、東京大学工学部長等を経て、20054月に第28代東京大学総長に就任。20093月に総長退任後、同年4月に三菱総合研究所理事長に就任。20108月には、サステナブルで希望ある未来社会を築くため、生活や社会の質を求める「プラチナ社会」の実現に向けたイノベーション促進に取組む「プラチナ構想ネットワーク」を設立し、会長に就任(2022年一般社団法人化)。著書に「新ビジョン2050(日経BP社)」、「『課題先進国』日本(中央公論新社)」、「日本『再創造』(東洋経済新報社)」など多数。



アカデミア視点と経営者視点から見る、日本の課題

古川:
小宮山先生とユカリアには様々なご縁があります。
まず私との接点を申し上げますと、私は2014年にユカリアを経営しながら社会人向けビジネススクール「東京大学 エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(以下、EMP)」に通っており、そこで先生が講義を担当されていました。そのときお話しされていた内容や考え方が非常に印象に残っています。
また、小宮山先生と当社取締役の三沢は、東京大学アメフト部OBという共通点があるようですね。

小宮山:
ご紹介ありがとうございます。
三沢さんたちの時代のアメフト部は、ベスト4に入るなどかなり強い時代だったようですね。学生時代の私も、当時創部間もなかったアメフト部に入り、活動に打ち込んでいました。
先ほどお話に上がったEMPは、私が東京大学の総長をやっていたときに立ち上げたプログラムです。当時は、日本の大学にビジネススクールが少なく、設置に向けた機運が高まっていた時期でもありました。一方で、サステナビリティといった考え方への関心が高まり始めていたこともあり、経営や経済、金融の知識をベースに物事を捉えるアメリカ型のビジネススクールの真似をしても意味がないと、試行錯誤しました。
その結果、実学と教養のバランスを重視したプログラムにより、課題を自ら設定し、解決に導く能力のあるリーダーを育てることを目標として、EMPを設立しました。大学や企業や、違う経験を持つ人たちが刺激しあって、互いに成長する場を創ろうとしたのです。そうした背景は、医療が抱える課題の解決により、社会価値をもたらすことをミッションとするユカリアの考え方とマッチしたのではないでしょうか。
 
古川:
かつてのユカリアは、病院経営を再建し、付加価値を生んだ対価をいただければよいという利益重視の考え方でした。
現在のユカリアを見ていただくと、自信を持ってそう言えるのですが、EMPで小宮山先生の教えを受けるうちに、課題に対する視点や考え方が変化し、病院経営を起点として、地域や社会全体にとっての利益を提供するために、どのようなビジネスを構築すべきかという視点に移っていきました。
小宮山先生は、いまの日本社会に対して、どのような課題意識を持たれていますか。

小宮山:
日本は今や、世界に先例のない「課題先進国」になったと考えています。
明治以降、欧米から様々な制度や産業を取り入れ成長を遂げてきましたが、もはや、かつてのように欧米諸国から制度や仕組みを導入することでは対処できないような課題が顕在化しています。私たち自身が、世界に先駆けて課題を解決しなければならないのです。
しかし、依然として「課題解決先進国」になり切れていないのが日本の現状です。課題解決が進まない背景として、一つは相互理解が難しいこと、第二に利害関係が複雑に入り組んでいることが障壁になっていると考えています。
 
古川:
まさに同様の構図が、医療業界にも存在します。
医療業界と一口にいっても、アカデミア、ビジネス、行政、病院、患者が分断されていて、共通理念がないために、強い産業が生まれていません。そのうえ、堅牢な業界の仕組みが出来上がってしまっていて、その構造の中で既得権益を得ている人もいます。
とは言え、より広い視点で見ると、その構造の中で得られる利益は小さな利益なのです。この構造を変えることで、患者や病院、医療従事者をはじめ、社会全体により大きい利益が生まれるため、当社は医療現場の変革に取り組んでいます。
私たちが行っている変革の一つに、「医経分離」というものがあります。法律により、医療法人の理事長は医師や歯科医が就くものと規定されているのですが、医者に必ずしも経営の素養があるとは限りません。そこで、経営部分をユカリアがサポートし、健全な病院経営を担い、医師が臨床に専念できる環境を整えることで、医療サービスの質を高めることができると考えています。
 
小宮山:
医者であろうがなかろうが、適性がある人が経営を行うというのは当然のことですね。実際、現在日本の病院の約7割は赤字と聞き、大変驚きました。健全な経営により利益を出すということは、とても重要なことです。

大学も医療と同様に、経営と本業の分離が必要な領域であると言えますね。2004年の国立大学法人化以降はコスト意識が求められるようになり、私自身、総長として大学変革には大変腐心しました。実際に組織運営に携わっていくなかで感じたのは、赤字になっている部門は補助金頼みの思考になるなど、考え方が後ろ向きになっていく、一方で、少しの額でも黒字に転じれば、その利益で何が出来るかと考えはじめ、ポジティブなサイクルが生まれていくということです。
医療の変革を進めるにあたって、現状の小さい利益を守るよりも、より大きな利益を作るというシナリオを伝えていくことが重要ですね。変革を日本の医療現場全体に起こしていくためには、ビジネスの規模を広げていくことも必要になるのではないでしょうか。
 
古川:
日本の病院の99%は小規模病院です。私たちのミッションの一つとして、ユカリアのネットワークでつながりを広げることで、地域に良い影響が伝播し、新たなバリューを生んでいくことが挙げられます。
地域社会という単位でヘルスケアのエコシステムの構築、ひいては日本全体の医療や介護の質の向上といった、あるべき姿を実現するために、変革を起こしていきたいと思っています。

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