EUCALIA IDENTITY#04 事業を拡大しながら社会課題を解決する インパクト投資のファーストペンギンに<前編>

2025425
EUCALIA IDENTITY

20252月よりユカリアの医療経営総合支援事業が病院経営にもたらす変革、ひいては社会保障費に与える影響を試算する共同研究を開始したインパクト投資の第一人者である東京大学大学院 経済学研究科 柳川範之 教授と、株式会社ユカリア 代表取締役社長の三沢英生が、インパクト投資の世界的な潮流から日本の現状、今後の展望、ユカリアのビジョン「ヘルスケアの産業化」ミッション「変革を通じて医療・介護のあるべき姿を実現する」について語り合いました。
 
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202523日のプレスリリース > 東京大学大学院 柳川範之研究室と共同研究を開始

【ゲストの柳川 範之氏ご紹介】

1963年生まれ。中学卒業後、父親の海外勤務の都合でブラジルに渡り、現地では高校に進学せず独学生活を送る。その後、大学入学資格検定試験(大検)に合格し慶應義塾大学経済学部通信教育課程に入学し、1988年に卒業。
1993
年、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。慶應義塾大学経済学部専任講師、東京大学大学院経済学研究科助教授などを経て、2011年より現職。
また、2019年内閣府経済財政諮問会議民間議員に就任。
主著に『日本成長戦略 40歳定年制』(さくら舎)、『東大教授が教える独学勉強法』(草思社)などがある。

インパクトの活動をどう広げ、いかに測定・評価するか

三沢:
法律と制度が経済活動に与える影響についての研究されているほか、経済産業省の「未来人材会議」座長を務めるなど人材育成、採用・雇用から教育に至るまで幅広い分野で活躍されている東京大学の柳川範之先生にお越しいただきました。
今回はインパクト投資をテーマについて幅広く議論させていただければと思いますが、その第一人者である柳川教授に、まず世界的な潮流や日本の現状についてお聞きできればと思います。
 
柳川:
事業活動や投資活動を通じて金銭的な利益を得ながら社会課題の解決につながる、インパクトのある投資を促進する動きは世界的に大きくなってきています。
日本でもそのトレンドは大きくなりつつあるのが現状で、日本の政権内部からも、社会課題の解決を経済の成長や発展へつなげていこうというメッセージが大きく打ち出されてきています。
 
インパクト投資は「社会貢献か、金銭的利益か」の二者択一ではなく、その両方を狙います。
社会課題の解決は、最終的には消費者や家計の困りごとの解決につながるので、それを実現できれば企業は利益を上げられるでしょう。
もちろん環境問題の解決が即座に利益につながるわけではないですが、長期的な目線で大きな社会問題を解決する、あるいは解決を目指していくことが利益の増大につながり、ひいては企業価値の向上につながるという考え方です。
 
三沢:
インパクト投資の対象となるスケーラブルな企業が、日本では十分に育っていないのではないかという見解もあるようです。
日本でインパクト投資が盛り上がりきらない大きな一因のようにも映りますが、柳川先生はどのようにご覧になっているのでしょうか。

柳川:
世間的に「インパクト投資」としてよく語られがちなのは、ファンドや金融機関が投資先にインパクト、たとえばプレミアムを持たせるための投資です。
ただ、実際に社会にインパクトを与えるのは融資や投資を受ける企業や団体ですから、それらの活動がどのくらいのインパクトを社会にもたらすことができるかがとても大事なところです。
スタートアップを含め、そうした活動をどうやって広げていくか、いかに分厚くしていくかは、日本国内だけでなく、インパクト投資そのものの課題だと思います。
 
三沢:
おっしゃるとおりですね。企業・団体と投資家がともにビジネスを通じた社会的価値の創造を推進していくんです。
 
柳川:
もうひとつの課題は、インパクトを測定したり、評価したりすることです。
 
三沢:
インパクトを「見える化」するということですね。
 
柳川:
インパクトにもいろんなレベルがあります。たとえば消費者のニーズを満たし、困り事の解決にもつながる製品やサービスの開発は企業の利益に直結するため、インパクトも見えやすいです。ところが環境問題やCO2の削減といった話になってくると「見える化」は難しく、たとえばグリーンウォッシュ(※)でないことを確認するという課題が出てきます。

※実態が伴わないにもかかわらず、あたかも環境に配慮しているかのように装う、配慮している面のみを強調した行動や表現をすること

仮にある企業活動が社会に貢献できたとしても、それが企業の利益にどうつながるかのロジックはなかなか見えてきにくいです。
世の中全体が良くなれば、誰もが幸せに暮らせるようになり、消費も増えて、自分の会社の売上にもつながる。
そんな話はどの企業活動にも当てはまりますが、かなり間接的なインパクトですし、いつ実現するかもわかりません。そこをどう判断するか。
 
間接的だけど意味のあることだという認識を、いかに共有するかが大事ですが、なかなか難しい課題だと思います。

社会保障費を削減しながらウェルビーイングを高めたい

三沢:
ユカリアは医療・介護業界で変革を起こし、産業構造自体を転換して、日本を豊かにしていきたいと考えています。
事業の拡大と社会課題の解決を同時に進めていくという意味でも、非財務情報の可視化という意味でも、ヘルスケア業界のファーストペンギンとなることを目指していますが、インパクト投資の観点から、ユカリアの取り組みは柳川先生にどのように映っているのでしょうか。
 
柳川:
病院の経営サポートや、医療の産業化といった話をすると、「お金儲けの支援をしているのではないか」「金銭的な利益だけを追求・拡大しようとしているのではないか」と思われがちです。
でも、ユカリアが実際にやっていることをインパクトという観点で見てみると、広い意味で「社会課題を解決する」「ヘルスケア業界をより良いかたちにしていく」という観点がかなり入っていると思います。

そもそも医療の問題や福祉、社会保障の課題は、民間企業ではなかなかうまく解決できないので、国が入るかたちで財政的にもいろいろ回してきた経緯があります。病院の経営を支援することでどのようなインパクトがもたらされるのか。しっかり見える化をしていただき、単純に利益を上げるのではなく、この取り組みで何を目指し、どのような社会貢献ができるのか、そうしたメッセージを社内外に伝えていただくことが大事だと思います。
 
三沢:
既得権益や縦割り構造の弊害、時代に即さない法令などもあり、ユカリアが掲げる「三方良し」の世界観はなかなか実現できません。
事業を拡大すると同時に、ビジネスを通じて現状を突破し、社会課題の解決と社会的価値の創造を推進していく考え方は、インパクトの本質にかなり近いのではないかと思います。
 
柳川:
社会課題はいくつもありますが、日本政府主導で解決に取り組んでいるのが医療の分野だと思います。
民間が補完するかたちで政府の取り組みをよりしっかりしたものにしていく活動は、これからのインパクトの活動においてすごく重要になってきますし、それを明確なミッションとして社内外に伝えていくのはとても大事なことだと思います。
その点において、ユカリアのビジネスが社会課題の解決を市場メカニズムにより目指すだけでなく、政府や厚生労働省が描いている地域医療構想の実現をサポートする形で実現できるなら、日本の医療に貢献しうるものになるでしょう。
ユカリアの医療経営総合支援事業が病院経営、そして社会保障費に与える影響を客観的に試算する共同研究はインパクトの計測として意味のあるものだと考えています。
 
三沢:
とてつもなく大きな話ですので、柳川先生からありがたいお言葉をいただき、使命感がさらに沸き立ってきます。
ユカリアが目指している世界観を発信し、共感の波紋を広げて、仲間を増やしていかなければなりません。
 
柳川:
事業の拡大が、どのようなかたちで社会貢献や社会課題の解決につながるかを、ロジックとデータでしっかり見せていただけると、インパクトの全体像がはっきりしてくるでしょう。
具体的に言うと、医療や介護の質をどのように高め、患者さんや高齢者の方々のウェルビーイングの向上につなげていくか――。
 
三沢:
しっかり可視化することで共感の波紋を広げ、仲間を増やし、うねりを大きくしていく。
 
柳川:
そうですね。
うねりを、社会課題の解決に貢献する部分でも大きくしていくべきだと思います。
 
三沢:
最大の社会課題のひとつは、肥大化した社会保障費をいかに抑制できるかです。
その課題解決を見据えた柳川先生との共同研究がいよいよ始まりますね。ワクワクが抑えられません。

柳川:
アカデミックな観点から、いろんな貢献ができればと思っております。
 
三沢:
今回の共同研究では、ユカリアの祖業である病院の経営支援にまず限定して、社会保障費の抑制にどのぐらいの効果やインパクトがあるかなど、病院経営にどのような変革がもたらされるかを明らかにしていきます。
将来的には、さらによりマクロな視点で、介護を含めたヘルスケア全体が経済的価値のみならず、ウェルビーイングの観点も含め、どのようなかたちで地域に貢献できるかを柳川先生と明らかにしていきたいです。
 
柳川:
地域医療構想のようなものがあり、その実現により近づく活動ができれば、政府が目指している方向性を支援する、政府の活動に対する補完的な役割を果たすことになろうかと思います。
社会保障費の削減はすごく大事な目標です。
それともうひとつ、医療や介護の質が上がれば、同じコストでもみんながより幸せに感じられる。
「より健康になる」というのが介護を含めた医療全体、社会保障システムの目指すべき方向ですから、どのようなロジックでそこに結びつくかを明らかにできると良いと思います。
 
三沢:
ありがとうございます。これまで「ユカリアの三方良しの世界観は、国の方向性にバチっと合うはずだ」との“自信”を持っていましたが、それがいま“確信”に変わりました。
 
柳川:
インパクトをしっかり可視化するのはそんなに簡単なことではないですから、どのようにチャレンジして、どのように実現していくかが課題だろうと思います。

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