【TOP対談~変革者に聞く】#01 ウィズコロナ・アフターコロナ、 これからの時代を医師として、 経営者として、どう見据えるか。<後編>
COVID-19感染流行から1年以上経ち、引き続き医療業界に多大なる影響を与えています。
今回は、2019年7月に行われたFriendship Meetingで、基調講演をしていただいた(下写真参照)大阪大学大学院医学系研究科、名誉教授である澤芳樹氏と、株式会社キャピタルメディカ代表取締役である古川淳がそれぞれの立場から語り合いました。
※※※<前編>はこちら※※※
詳細なご経歴は澤教授のホームページをご覧ください > http://sawayoshiki.com/
大きくモデルチェンジ、人を大事にし10年先を見据えた組織づくり
古川:
話は変わりますが、私は澤教授が大阪大学医学部附属病院で行った医局改革の話がとても印象に残っています。アフターコロナの業界を見据えるなかでも、組織づくりは重要ですので改めてお話を聞かせてください。
澤:
私が医局に入ったときは、まさしく、あの「白い巨塔」のようでした(笑)。しかし、ドイツやアメリカに留学をしたことで、その考えは大きく変わります。教授も学生も名前で呼び合うようなフラットな関係ながら、お互いにリスペクトもしている。目的を成し遂げるための集団が組織になっているという雰囲気でした。その光景を見て、日本に帰って自分が教授になったときにはモデルチェンジをしようと考えました。
具体的には白い巨塔のような「円錐・ピラミッド型」ではなく「円柱型」、第一線で活躍できる人材をたくさん輩出していこうと。私個人のポテンシャルはしれているので、マネジメントやリーダーのひとりとしてやればいいと思いました。大学病院としては異例ですが地方病院への医師派遣をほぼなくしました。そして若い時からどんどん手術を経験させることで評判が広がり、全国から優秀な人材が集まってくる医局になりました。
古川:
従来の「何年我慢したら、ようやく手術ができる」という風土を大きく変えてきたわけですね。根付いてきたことを変えていくとなると、大きな反発もあったであろうなかで、実行し続けたのが、澤教授のすごいところです。
私も経営者として、チャレンジする風土を大事にしています。私は医療従事者ではありませんが、このマーケットで何か価値を残そうと思ったら、医療従事者では考えつかないようなサービスを提供しなければいけません。そういうものをどんどん生み出せるようなメンバーを組織に引き入れて、チャレンジし続けられる仕組み、組織づくりを意識しています。
澤:
チャレンジできる環境は、大切ですね。私も『60%ルール』というのを作り、「部長は40%以上のことはするな、若い人に60%させろ」と言っています。そして、それぞれに夢を持たせることも大切にしています。30〜40年先を予想するのは難しくても、10年後に自分がどうなっているかは想像し易いですよね。周りで働く10歳上の輝く先輩を見れば、さらにそれを超えるような10年後の自分を思い描けるでしょう。このように医局では、『10年先を行く心臓外科』として必要なリスクをとりながらも、描いた未来を実現できる組織になっています。
産業化の要素を取り入れる、次世代のリーダーを育てる、それぞれの今後の展望
古川:
今後力を入れたい、取り組みたいことなどはありますか。今後の展望についてお聞きしたいです。
澤:
まずは人材育成に尽きます。新しい道を切り開いていけるような次世代のリーダー人材をどうやって作っていくかというのが課題です。目先のことだけにとらわれず、常に二手先、三手先のことを考え対応する、土台がしっかりとした組織運営を実行できる人が増えてほしいと思っています。
リーダーは時に「板挟み」にあい大変なこともありますが、その経験が人を強くします。古川さんのように(笑)
古川:
ありがとうございます。「板挟まれ力」は大事ですね(笑)キャピタルメディカは医療・介護現場に寄り添って17年目になります。我々が目指すのは、医療現場で働く人たちが、より効率的で生産性が高い現場を作っていける環境です。それを実現するためのサービスや資源をこれからも投入し続け、広めていくことが使命だと考えています。
医療の世界では、いいものを作っても規制がかかり、競争原理が働かないこともあります。しかし、いいものは広げていかなくてはいけません。そのために力を尽くし、結果として「産業化」の要素をうまく取り入れられるような業界にしたいと思っています。
澤教授、この度はありがとうございました。