TOP対談~変革者に聞く】#03「心理的安全性」を高め、 よりよい組織づくりを推進する。<後編>

2022512
TOP対談〜変革者に聞く

帝京大学ラグビー部を監督として率いて、前人未到の9連覇を含む10度の大学選手権優勝を達成。大学スポーツ界にイノベーションを起こした岩出雅之氏と、株式会社ユカリア代表取締役の古川淳が、昨今組織づくりにおけるキーワードとして話題の「心理的安全性」について語り合いました。

※※※<前編>はこちら※※※

【ゲストの岩出雅之氏ご紹介】
帝京大学スポーツ局 初代局長 医療科学技術部スポーツ医療学科教授(帝京大学ラグビー部前監督)
日本体育大学時代、ラグビー部でフランカーとして活躍し、1978年度全国大学ラクビーフットボール選手権大会で優勝の原動力になり、翌年度、主将を務める。教員となり、滋賀県教育委員会、公立中学、高校に勤務。滋賀県立八幡工業高校では、ラクビー部監督として同校を7年連続で花園出場に導く。高校日本代表コーチ、同監督を歴任後、1996年より帝京大学ラグビーフットボール選手権大会で総部40年目に初優勝。2009年度からの9連覇を含む10度の優勝を経験。
2022
年度より、広くスポーツを通して社会の発展に寄与することをめざし創設された「帝京大学スポーツ局」の初代局長に就任。

帝京大学スポーツ局のホームページはコチラ >
http://www.teikyo-u.ac.jp/studentlife/club/sportsbureau/

教えることではなく、体験させることに注力

古川:
岩出さんは監督として輝かしい功績を残されましたが、特に9連覇を達成する前の段階で、マネジメントにおける苦労はありましたか。

岩出:
力量不足を痛感していました。特に難しかったのは、選手を本気にさせるためのアプローチですね。人は、良くも悪くも周囲の環境に影響されます。まわりに優秀な人が多ければ、その仲間に染まるようにして能力を高めていけますが、逆にならば、皆で右往左往することになる。そういった文化性のなさにも苦しみました。

古川:
文化とは、病院や企業活動にも当てはまりますね。企業風土や職場環境と言うこともできるかと思います。

岩出:
その通りです。環境とは、1人ひとりの個人から成り立っていて、人づくりこそ環境づくりの第一歩です。そのため、とにかく人の教育には心血を注ぎました。大切にしていたのは「教育とは教えることではなく、体験させること」という考え方です。特に学生相手では、頭ごなしに理屈ばかり話しても伝わりません。学生の特性に合った方向性を示唆しながらも、あとは自ら進んで考えさせ、体験させる。こうして自主性を伸ばすことも同時に考えながら、体験型の学びを提供していました。
さらには、その体験を「学生たち自身で共有化させること」にも注力しました。学生だって、私のような歳の離れた人から聞くよりも、同世代の仲間から聞いた方がよっぽど納得感がある。部員のなかには、仲間に伝えることが得意なキーマンとなる学生が毎年何人かいるものです。その学生を見極め、どんどん権限を渡していくことで【学習する集団】の形成を目指しました。

古川:
どれもが企業の人づくりにも通じていると感じました。
体験させる教育を重視したのは、何か理由やきっかけがあったのですか。

岩出:
自身の高校時代の経験が大きいと思います。当時、1年間で練習試合が1回しかできないような環境でラグビーに取り組んでいました。その1試合に向けて相当大きなモチベーションを持って、どんな練習が必要でどうすれば勝てるのかといったことを常に想像しながら体を動かしていたため、自分で考える力が養われたと感じています。

古川:
なるほど。ご自身の実体験に基づいているんですね。


仕事もスポーツも「ライブ」を楽しむことが大切

古川:
岩出さんはご自身で成長する術を手に入れられましたが、人を成長させることを考えた場合、具体的にどんなことを体験させるべきだとお考えでしょうか。

岩出:
もちろん人それぞれではあるのですが、心理学の「フロー理論」がひとつ役立つと思います。
「フロー」とは、夢中になっている状態のこと。子どもはよく我を忘れて遊びに没頭しますよね、要はあの状態に導くことでより成長できるという考えです。
「フロー」状態の到達には、少し努力すれば届くくらいの適度に高い目標を設定することが求められます。「飽きる」と「諦める」のちょうど中間くらいを目指すとよいでしょう。
この目標はそれぞれの力量の変化に応じてアップデートすることが大切で、自分で自分の課題がコントロールできれば、ずっとフローの状態で成長し続けることもできる。逆に言えば、いつも何も考えずに同じ練習を繰り返すだけでは、成長は鈍いと考えられます。

古川:
「フロー」は、ポジティブに「楽しさ」を感じながら取り組むことも重要であるように感じます。岩出さんは監督時代に「Enjoy & Teamwork」というチームスローガンを掲げていました。物事を楽しむことは、仕事をする社会人にも通じるように思います。

岩出:
そうですね。「楽しさ」は、実感の深さに比例します。例えば、同じスポーツ観戦でも、テレビとライブはまったく別物です。生での体験は、カメラ越しでは伝わらない、さまざまな感覚が得られます。よりライブ感覚を優先することが、日々の「楽しさ」につながっていると言えるでしょう。これはコロナの時代を生きる今の私たちだからこそ、改めて大切にすべき考え方だと感じている今日この頃です。

古川:
本当にその通りですね。ユカリアグループのメンバーも、医療や介護の現場に足を運ぶことで、さまざまな事を感じとることができます。そのような環境のなかで、岩出さんのチームの学生のような熱量を各人に持ってもらい、仕事を楽しみながら成長していってほしいですね。
また、2005年にユカリアの前身であるキャピタルメディカを創業して以来、病院経営のマネジメントに携わっていますが、まだまだ取り組むべきことは沢山あるのだと、今日のお話を聞いて痛感しています。
今まで以上に、組織にフォーカスしていくことで、「ヘルスケアの産業化」という我々のビジョンを共に実現したいと思う人が集まってくる企業を目指していきたいと思います。

岩出さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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