虎の巻その4
医療費はどうやって決まるの?
はじめに
こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。病院経営コラム「病院経営~虎の巻~」。
毎月病院に行くたびに保険証を提示して窓口でお会計し、後日、会社から「医療費に関するお知らせ」の案内をもらって、支払い前の金額の高さに驚いた経験はありませんか?
この「医療費」はどうやって決まるのでしょうか。
医療保険と医療費
病気やけがをした場合、病院や診療所などの医療機関や調剤薬局などで診察・投薬・治療その他必要な医療サービスを受けることができます。この場合にかかった費用を「医療費」と言います。
日本国民はいずれかの医療保険に加入することになっていて(国民皆保険制度)、治療した際の医療費を全額自分で負担しなくても済んでいます。患者が負担する医療費の割合は、原則的には、かかった医療費の3割となっています(受給している公費により異なります)。
ただし、義務教育就学前の子どもは2割、70歳以上75歳未満の被保険者は所得に応じて2割または3割、75歳以上の後期高齢者医療制度の被保険者は所得に応じて1割または3割となります。
一部負担とはいえ、治療の内容によっては負担すべき医療費の額が高額になってしまう場合もあります。そこで、自己負担分が過重なものとならないように、医療保険には医療費の自己負担分に対して一定の上限を設ける「高額療養費制度」があります。医療機関や薬局での自己負担額が月単位で一定額を超えた場合に、その超えた金額を医療保険から支給するもので、その自己負担の上限額は年齢や所得、治療した期間によって異なります。
診療報酬制度
医療保険制度の加入者である被保険者が患者として医療機関などで医療サービスを受けたときにかかった「医療費」は、医療機関側にとっては提供したサービスに対する対価となるものです。この医療サービスに対する対価を「診療報酬」と言います。診療報酬には、技術・サービスの評価と物の価格評価が含まれています。
診療報酬は、医療保険制度の加入者である被保険者と保険者から支払われることになります。医療機関などは、被保険者からは医療費の一部を患者負担額として直接支払いを受けますが、保険者からは、診療報酬の請求を審査支払機関に対して行うことによって診療報酬の支払いを受けることになります。
診療報酬は、医療機関が行った診療行為などの医療サービスの対価として支払われるものであり、保険医療の範囲・内容を定める品目表としての性格を持つと同時に、個々の診療行為の価格を定める価格表としての性格も持っています。具体的には、診療報酬は、医療機関が実施した診療行為ごとにそれぞれの項目に応じた点数が加えられ、「1点単価10円」として計算されています。
たとえば、胃がんで入院した場合、初診料、入院日数に応じた入院料、胃がんの手術料、検査料、薬剤料などが加算されて、医療機関は、その合計額から患者の一部負担金を差し引いた額を審査支払機関から受け取ることになります。保険者は、審査支払機関の審査済請求書に基づいて審査支払機関に対して医療費の請求金額を支払います。
この診療報酬は2年に1度改定があります。厚生労働大臣が厚生労働省に設置した中央社会保険医療協議会(中医協)において改定の必要性について審議された後に、諮問・答申を経て、厚生労働大臣が定めることになっています。
まとめ
- 医療保険制度により医療費は原則的に3~1割負担となっている
- 医療機関は対価を「診療報酬」という形で支払いを受ける
- 診療報酬は2年に1度改定される
2020年は診療報酬改定の年です。診療報酬制度は病院の経営に直結する制度のため、各医療機関は改定ポイントをよく把握する必要があります。また今後の医療環境を読み解くヒントがつまっていますので、ニュースなどで着目してみてください。
「病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!