虎の巻その7
医療法の改正と歴史について

20201027

はじめに

こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。病院経営コラム「病院経営~虎の巻~」。

今回は医療法についてです。
前回の記事で病院の特性に「制約の存在と制約の変化」があると紹介しました。
その制約の大元となる法律のひとつが「医療法」です。
「医療法」は「医師法」、「歯科医師法」、「保健師助産師看護師法」などと並び、医療の提供体制を定める法律として我が国の衛生法規の根幹をなすもので、医業を行うことのできる施設としての病院、診療所などについて定める医療施設に関する根本的な法規です。
今回はその概要と大まかな改正の流れを見て行きましょう。

医療法の目的と主な内容

医療法の目的は、医療を受ける患者の利益の保護と、良質・適切な医療の効率的な提供体制の確保を図ることで、国民の健康の保持に寄与すること、とされています。
主な内容は以下の通りです。

総則(医療提供の概念、病院・診療所など)
医療に関する選択の支援等
医療の安全の確保
病院、診療所及び助産師の開設・管理・監督等
医療提供体制の確保
医療法人制度

医療法の改正について

医療法は1948年(昭和23年)の制定以来70年以上経っていますが、現在までに8回改正されていますので主な改正点を見て行きましょう。

【第1次改正】 1986年(昭和61年)施行
・医療計画制度の導入
・病院病床数の総量規制
・医療資源の効率的活用
・医療機関の機能分担と連携を促進
・医療圏内の必要病床数を制限

総量規制のはじまり。医療計画においては、医療圏ごとに必要病床数を定め許可制とすることで、一定の猶予期間をおいて、 その後は必要病床数を超える新たな病院・病床の設置を排除しました。

【第2次改正】 1993年(平成5)施行
・特定機能病院及び療養型病床群の制度化
・看護と介護を明確にし、医療の類型化、在宅医療の推進
・広告規制の緩和

病床機能の類型化され、診療報酬における包括支払い制度がはじまりました。

【第3次改正】 1998年(平成10年)施行
・地域医療支援病院制度の創設
・診療所における療養型病床群の設置
・在宅における介護サービスの在り方
・医療機関相互の機能分担
・インフォームドコンセントの法制化

大病院思考からより地域重視へ。 他の医療機関との連携がはじまりました。

【第4次改正】 2001年(平成13年)施行
・一般病床と療養病床の区分化
・医療計画制度の見直し
・適正な入院医療の確保
・広告規制の緩和
・医師の臨床研修必修化(医局制度に変化大)

「一般病床」と「療養病床」を区分化し、届出を義務付けました。それに伴い、1床あたり面積、廊下幅といった施設要件も大幅に変更となりました。

【第5次改正】 2007年(平成19年)施行
・患者への医療に関する情報提供の推進
・医療計画制度見直し等を通じた医療機能の分化・地域医療の連携体制の構築
・地域や診療科による医師不足問題対応
・医療安全の確保
・医療法人制度改革
・有床診療所に対する規制の見直し

法人制度改革(社会医療法人の創設/新規法人設立を持分なし医療法人に限定)を推進しています。

【第6次改正】 2014年(平成26年)施行
・病床機能報告制度と地域医療構想の策定
・在宅医療の推進
・特定機能病院の承認の更新制の導入
・医師・看護職員確保対策
・医療機関における勤務環境の改善
・医療事故調査制度創設
・臨床研究の推進

今も盛んに言われている「地域包括ケアシステム」の構築が全国的に進められるようになったのがこの時です。

【第7次改正】 2015年(平成27年)施行
・地域連携推進法人制度創設、
・医療法人制度の見直し

6次改正で掲げた「地域包括ケアシステム」の構築の実現に向けた改正となっています。

【第8次改正】 2018年(平成30年)施行
・特定機能病院の管理運営体制の強化
・医療機関ホームページの広告規制

2014
年の医療事故の隠蔽事件を受けて、特定機能病院の管理・運営体制が強化されました。
また美容医療に関するトラブルの増加から、それまで通常公告と見なされていなかった医療機関のホームページが規制対象となり、虚偽・誇大広告などが禁止となりました。

9次改正は2024年(令和6年)に向け「良質かつ適正な医療を効率的に提供する体制の確保をするための医療法等の一部を改正する法律」が成立するなど段階的に施行中ですが、

・医師の働き方改革
・各医療関係業種の専門性の活用
・地域の実情に応じた医療提供体制の確保

などが概要になっており、2020年の新型コロナ感染症の感染拡大を鑑みて、地域医療提供体制(民間の医療機関含む)がより効率的にかつ継続的に医療提供ができる体制を整備する底支えが趣旨となっています。

改正内容の中でも医師の働き方改革は20244月に段階的な施行が控えており夜勤当直体制の見直しなどの対応に追われている状況です。各医療関係業種の専門性の活用を通して医師の負担を軽減し、持続可能な医療提供体制を維持しようという、世相の流れを反映した改正となります。

まとめ

  • 「医療法」は、日本の医療の提供体制を定める法律である
  • 医療法は社会環境の変化に応じた改定を経ている

大まかではありますが、医療法の改正を時系列で見て行くと、国が目指している医療提供体制の方向性が見えてきますね。
病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!

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