虎の巻その23 病院建築~新棟建て替え計画、丸わかり

202193

はじめに

こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。病院経営コラム「病院経営~虎の巻~」。
今回は「病院建築」シリーズの2回目、新棟建て替え計画についてです。
日本の病院の多くは築30年を迎えています。近いうちに到来する新棟建て替えについて「何から着手したら良いか判らない!」という方が大部分を占めると思います。
そもそも建替がなぜ必要かを認識把握する必要があります。

「新棟計画」はどのように進めるの?

そもそも、建て替えがなぜ必要かを認識・把握しなければなりません。大きく分類すると下記4項目が考えられます。

  • 老朽化(さらに分類すると「物理的」、「機能的」、「相対的」が考えられます。)
  • 拡大もしくは縮小(規模変更)
  • 機能転換
  • 移転新築

一番多くの理由に挙げられるのが、「物理的」老朽化です。そして他の要因が複合的に重なり決定に至る場合が多いようです。

続いて具体的な進め方ですが、(図2)が開院までの大まかな建て替え全体の流れとなります。
①基礎調査➭②基本構想➭③基本計画➭④基本設計➭⑤実施設計➭⑥施工➭⑦移転準備期間➭⑧開院

(図2)建て替え全体の流れ

特に点線で囲んだ部分が最も重要で、検討の程度がその後の基本・実施設計に大きく影響します。不十分だと手戻りや計画見直しなどが発生する可能性が考えら、建て替え計画の成功の鍵を握る重要な検討段階です。
順番に詳細を説明していきましょう。

①基礎調査

まずはじめに、病院の内外状態を俯瞰した第三者目線で調査を行います。(図3)のように【外部環境調査】、【内部環境調査】、【院内ヒアリング】、【立地環境調査】を通じて病院の強み、問題点、改善点を可視化します。

(図3)基本調査概要

②基本構想

新病院の「あるべき姿」を念頭に置いて、診療科目、検査、病棟構成や新病院コンセプトといった新病院の骨格を取りまとめます(図4)。
この基本構想策定を精緻にすることが、新病院成功の扉を開くカギとなります。

(図4)基本構想概要

③基本計画

①と②の検討内容を具体的な形(概略図)に落とし込み可視化します。(図5、6、7)
階構成、平面構成等の検証を行い次のステップの「基本設計」に繋げます。

(図5)基本計画

(図6)階層構成・各棟機能配置

(図7)平面ゾーニングの例

④基本設計

③で策定された内容を基に図面化し検証作業を繰り返します。
諸室規模算定や動線確認、診察室や外来待合スペース等検討事項は多岐にわたります。医療機器の規模仕様、厨房機器等病院運営に必要な項目も全て落とし込みます。
この段階での見直しは可能ですが次の「実施設計」になると変更が困難になる為この基本設計で積み残しがないように検証を繰り返すことが最重要事項となります。

⑤実施設計

④をベースに詳細図面化します。使い勝手の検証やコンセント・非常用電源コンセント設置箇所や位置等、診察室、病棟や検査課等、各担当部署の方々と一つ一つ図面確認していくことになります。
同時に、建築基準法申請手続きや関係法規申請手続き、施工会社見積依頼のための準備も行います。

⑥施工

入札または競争見積等により決定した施工会社が、実施設計図書を基に施工を行います。施工中も実施設計中同様に最終確認のために各担当部署の方々と確認していきます。
完成の際には、建築基準法および建築関連法規の完成検査を受検し、すべての検査に合格して初めて建物を使用できる事になります(検査済証)。

⑦移転準備期間

建物を引渡し後、開院のための医療機器や什器備品、病院家具等を搬入・設置をして、医療行為ができるように整備した後、最後に旧病院からの患者移動を開始します。
実際にシミュレーションを行い、移動順番や手順、連携等を確認し、万全の体制で当日を向かえる事前準備が重要です。

⑧開院

以上が基礎調査から開院までの一般的な流れです。
開院までは最短でも4年はかかり、一般的には56年の時間が必要となります。ただし、移転新築の場合で新しい土地探しから始めるため更に時間が掛かると思われます。

まとめ

  • 物理的」な老朽化により、建て替えを決定する病院が多い
  • 建て替え計画の初段階の、基礎調査/基本構想/基本計画の検討が最も重要である
  • 通常の建て替え計画は56年の時間を要する

次回は、これらの建て替え業務を全面的に支援する「コンストラクション・マネジメント」について説明します。

病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!

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