虎の巻その28 失敗から学ぶ病院経営~ケース①コンセプトが無い

2021111

はじめに

こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。病院経営コラム「病院経営~虎の巻~」。
COVID-19
感染拡大から約1年半、COVID-19患者受け入れや、感染対策をしながらの通常診療拡と日々の対応の追われるなか、アフターコロナに向けて生き残る為の経営戦略策定に追われている病院関係者の皆さんも多いと思います。

ユカリアはこれまで100件以上の病院経営支援をしてきましたが、病院経営が悪化し当社に相談に来ることになった経緯などを知るにつけ、いくつか共通項がありその「失敗から学ぶ」ことが多くありました。
そこで、今回から4回にわけてよくある事例を紹介していきたいと思います。
題して「失敗から学ぶ病院経営」です。

「こんな病院にしたい!」というコンセプトが無い

初回は病院のコンセプトが無い、もしくは長らく見直しを行っていないばかりに、社会状況に順応できず経営難に陥るケースを紹介しましょう。
地域にひとつしか無い病院なら、コンセプトが明確で無くてもある程度、地域住民は受診していたかもしれません。しかし、様々な病院が乱立する中では、他院とのはっきりした違いを打ち出し、存在価値を示していくことが必要となります。今のコロナ禍のように社会が急速に変化する時代ではなおさらのことです。

事例紹介~A病院の場合

首都圏郊外にあるA病院もそういったケースのひとつでした。
A
病院は1980年代後半に、首都圏郊外のニュータウンブームとともに診療所から病院に規模を拡大していきました。病院長は消化器系の専門でしたが、地域住民の声に応える為、出身大学病院とのコネクションを深めて多分野の医師を招聘しました。
ところがA病院の盛況ぶりを受け、2つの医療法人が参入して3病院が乱立する状況になりました。A病院理事長は先駆者としての慢心により「かかりつけ患者は取られないだろう」と高をくくっていましたが、新規参入の病院はそれぞれコンセプトを持って市場調査をして参入してきました。

<各医療機関のコンセプト>

A病院の失敗は、ニュータウンの発展とともに変化する市場調査を怠りB病院、C病院が進出して来た時点での影響を甘く見ていた事です。
事実、B病院の救急受入は外科系疾患の流出となり、健診や生活習慣病患者はC病院に流出してしまいました。
A
病院は独自で再建に取り組みますが、コンセプトを見直すことなく同じ領域を強化していく事や設備投資に走ってしまったため、数年で赤字が積み重なり、この段階で相談を受けたユカリアが経営支援をすることになりました。

まず一番初めに実施したのが病院のコンセプトを明確にすることです。
A
病院は外部環境調査より、地域の医療ニーズは確実にありました。生き残る為の病院機能像と重なるコンセプトを打ち出し、2病院との連携を図り、ポストアキュート(※1)寄りの病院機能に軌道修正しました。
A
病院は現在は独自の存在価値を高め収益構造も改善しています。

1 ポストアキュート
急性期後に引き続き入院を要する状態

まとめ

  • 病院のコンセプトを明らかにしたうえで、基本戦略を持つ
  • コンセプトは環境の変化に対応して見直していくべきである。

コンセプトを明確にしないことで、社会インフラである病院の経営が悪化することは、地域社会にも悪影響を及ぼしてしまう、ということがお分かりいただけたと思います。
病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!

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