虎の巻その31 失敗から学ぶ病院経営~ケース④事務職員のモチベーションが低い
こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。病院経営コラム「病院経営~虎の巻~」。
「失敗から学ぶ病院経営」と題した事例紹介の最終回です。
今回はよりミクロな視点から、病院職員、なかでも医療従事者ではない事務職員のお話しです。
チーム医療の必要性が唱えられ診療報酬でもチーム医療体制を評価する加算が着実に増えている一方で、医師の排他的権限が認められているという法制度上の問題もありますが、「医師が他の職種の意見を聞いてくれない」などという定性的な相談を受ける事が多くあります。
事務職員のモチベーションが低い
「チーム医療の推進」や「分業による協業」など理想的な病院組織体制のワードをよく聞きますが、どこの病院でも実現されているとは限りません。医師を頂点に、その指示で看護師及び薬剤師などが動くといった旧体型のピラミッド型の構図は未だに残っているように思います。
これは他職種のモチベーションや責任感を低下する要因に繋がります。実際、保助看法(保健師・助産師・看護師)が施行されてからも名前で呼称せず「看護婦さん」や「男の看護婦さん」と呼び続け、看護師が定着しないような事例もあります。
直接の医療行為とは関係ない事務職員の対応も病院の質を決定する要素のひとつです。しかしながら正式な部署名や役職を覚えてもらえず、医師から一様に「事務屋」と呼ばれている病院が依然と多く、これでは仕事への動機づけを生み出す事はできません。
モチベーションが低く、責任感が無い事務職員が対応していれば、病院の総合評価が高くなる事はありません。特に病院の医事課は、初めて来院した患者と接することになります。受付の対応で病院の第一印象が決まると言ってよいでしょう。
病院関係者の方から見ると、医事課は「保険請求のプロ」という印象が大きいと思いますが、このような病院の入り口の印象作りも、事務職員が担う重要な役割なのです。他業種に置き換えると、空港のグランドスタッフやホテルのフロントです。窓口対応が悪ければ会社全体のイメージ低下に繋がりますよね。これは医事課だけの問題では無く、事務部及び病院全体で取り組まなければ、改善は難しいと考えます。
戦略的に育成すれば、経営という視点からも医師に有効な助言を発信できる存在が「事務管理部門」です。その部門を活かすか否かもまた、病院経営の成否を分けるターニングポイントとなるのです。
事例~D院の場合
東日本の地方都市にあったD病院は、まさに事務部門を活かせず、経営破綻に陥った病院事例です。
D病院の理事長にはそもそも「事務部門の戦略的活用」といった発想が皆無でした。そして事務長も自らを「事務屋」と呼んでいました。
そのような中、大きな事件が起こりました。事務長が病院に出入りする医療機器商社より賄賂を受け取っていたのです。事務長は解雇になりましたが、事件は地元紙でも大きく取り上げられます。あろうことかその事務長は「医師も業者から裏金をもらっている」と、ありもしない内部情報を広め次第に「病院ぐるみ」といった見出しで報道されるまでになってしまい、D病院は途端にネガティブなイメージを抱かれてしまいました。しまいには「受付がいつも暗いのは、うしろめたい事があったからかしら」とまで言われる始末です。
医療品業者とも取引を中止されてしまい経営を継続する事はできなくなりました。最終的に、取引銀行の勧めもありD病院は大手医療法人に買収され、名称も変えて再スタートする事になりました。
自業自得とはいえばそれまでですが、事務職員のモチベーション低下、責任感の欠如が招いた結果でした。
D病院の内部調査結果をもとにセルフチェックリストを作成してみました。
半分以上該当する場合は至急改善が必要です!
まとめ
- 事務職員にもやる気を与え、病院の窓口を明るくしていく
さて、「失敗から学ぶ病院経営」シリーズはいかがでしたでしょうか。
病院経営が悪化するのは決して特殊な要因ばかりではないことがお分かりいただけたと思います。
裏を返せば、きちんと現状を見直し対処することで、コロナ禍でも病院経営を立て直すことができるのです。
「病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!