虎の巻その32 老人ホーム紹介会社を活用しよう(上)
はじめに
こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。病院経営コラム「病院経営~虎の巻~」。
今回は、ユカリアグループの㈱あいらいふの協力を得て、「老人ホーム紹介会社」の活用についてご紹介したいと思います。
国内における高齢者人口は増加の一途をたどっています。
皆さんもニュースなどで「2025年問題」という言葉を耳にすることが増えているかと思います。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、日本の全人口の2 割弱が75歳以上の超高齢化社会になる、2025年が目前に迫り、介護が必要となった高齢者の社会的受け皿となる施設も急増しています。
そのような社会環境のなか、存在感を高めているのが「老人ホーム紹介会社」です。
「老人ホーム紹介会社」って、なに?
「老人ホーム紹介会社」は、その名の通り、豊富な施設情報と専門性を持った入居相談員が、入居希望者の身体や経済的状況に合った有料老人ホームを探してくれる会社です。
「老人ホーム紹介会社」の基本的な収益は、入居者の紹介が成約となった際に各施設の管理会社から支払われる「紹介手数料」の受領によります。
そのため、相談者となる病院や居宅介護支援事業所、介護家族には相談料や紹介料を求めず、無料で相談から入居までのサービスを提供する紹介会社がほとんどです。
「老人ホーム紹介会社」は地域連携室の強い味方
病院内の地域連携室において、日常的に行われている退院支援。
急性期病院などは、入院から退院までのごく短期間で、膨大な種類と数の中から最適な1施設を探し出す大変な作業です。
しかも、先に述べたように日本全国の「介護付有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」の数は増加傾向にあり、2019年の時点で既に2万棟を超えています。
施設の種類やサービス内容も多岐にわたるため、病院の退院支援の現場でも各施設のサービス内容の現状を把握することが今まで以上に困難になってきています。
日々忙しくされている連携室の方が老人ホームに直接足を運ぶことは難しく、パンフレットを見て患者に合うのか見極めるのは大変な労力なのではないでしょうか。
たとえ、エリアや予算、身体状況などある程度の条件を絞って探したとしても、選択肢が多すぎて選びきれなかったり、条件に合う施設が見つからなかったりすることが多くあります。そのような時は、「老人ホーム紹介会社」を活用してみてください。
「老人ホーム紹介会社」では、医療ソーシャルワーカーなどの退院支援担当者から連絡を受けると、まず患者個人の身体状況や希望の他、人生歴、家族の状況など含め、様々な角度から詳細にヒアリングします。そして、「本人や家族は、今後どう暮らしていきたいのか」という視点で希望条件を整理、優先順位をつけたうえで、その方に合った選択肢を提示します。
ここで、一つの事例を紹介しましょう。
<事例>
自宅で転倒して大腿骨頸部を骨折した90代女性。家族の希望は、「退院後、自宅で一緒に暮らす」ことですが、再び転倒する可能性が高く、医療ソーシャルワーカーの立場として、退院後すぐの在宅介護の再開には賛同できませんでした。
そこで、医療ソーシャルワーカーは、老人ホーム紹介会社へ相談。
早速、担当の相談員から3パターンの老人ホームが提案されました。
①散歩リハビリを行うホーム。
②理学療法士、作業療法士常勤、個別リハビリに定評があるホーム。
③理学療法士巡回、リハビリ機器使用のホーム。
患者や家族も交えて話を進めていくうちに、相談員は、「つらいリハビリはしたくない」という患者自身の「言葉にならない声」を察知しました。
そこで、相談員は、あらたに、自宅からもさほど遠くない距離にある河川敷の遊歩道を毎日散歩できる「散歩リハビリ」を提供する老人ホームへの入居をすすめました。
さらに、ゴールを「自宅に戻ること」に設定し、一時的な滞在とすることも提案。そうすれば、家族の希望も叶えることができるからです。
入居後、女性は、美しい自然を眺めながら自身のペースでリハビリに取り組み、家族共々前向きな気持ちで日々を過ごしているそうです。
このように、相談員は居室の特徴や食の好み、ホームのスタッフの対応など、実に詳細な点まで考慮しながらホーム選定を行います。
医療的ケアの必要な方、重い認知症状のある方についても、個々の患者や家族に寄り添いながら、それぞれの問題を解決できる最適な老人ホームを探してくれます。
実際、あいらいふでも「骨折で入院し、退院予定日を5日後に控えた患者」や「年金も貯金もない独居の患者」、「暴言、暴力など問題行動の多い認知症の患者」といった厳しい条件のある相談でも、希望のスケジュール内で希望の条件に合った老人ホームに入居の決まった事例が数多くあります。
さらに、紹介会社によっては、地域連携室の方や入居希望者の老人ホームへの見学予約や見学への同行、気に入らなかった場合の断りの連絡、入居時に必要な書類の準備なども代わりに行ってくれます。
退院支援業務のサポーター的存在と考え、わからないことや不安なことは何でも相談してみるとよいでしょう。
まとめ
- 全人口の2 割弱が75歳以上になるといわれる、いわゆる「2025年問題」が目前に迫っている
- 多くの「老人ホーム紹介会社」は、相談料・紹介料無料。見学時の同行、入居準備のサポートをしてくれる紹介会社もある
- 「老人ホーム紹介会社」の相談員は専門性も高く、退院支担当者が目指す「患者とその家族一人ひとりに合った生活再建」という観点から、最適な老人ホームを紹介してくれる