虎の巻その37 2026年から2027年に予定されている医療法の改正について

20251021

はじめに

こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。病院経営コラム「病院経営~虎の巻~」。

前回のコラム「医療法の改正と歴史について」では、医療法のこれまでの改正とその歴史について整理しました。

今回は、20252月に閣議決定された医療法の改正案について解説します。

医療法改正案の内容について

20252月、政府は「医療法等の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。

本法案は、2040年に高齢者人口がピークを迎えることを見据え、幅広い分野における制度改正が盛り込まれています。今後の国会審議を経て可決、成立すれば、2026年から2027年にかけて施行されることが想定されますが、具体的な施行期日は条文等で定められる予定です(202510月現在)。
なお、本改正案の主な論点は次のようにまとめられます。

①新たな地域医療構想への転換
②オンライン診療の法制化と拡大
③美容医療への対応強化
④医師偏在対策の強化
⑤医療DXの本格推進

この5つについて順に説明します。


1
新たな地域医療構想への転換
2014年の医療法改正で導入された地域医療構想は、団塊の世代が後期高齢者となる2025年を目標として、必要病床数の確保と医療機能の分化・連携を推進してきました。
今後は、さらなる超高齢社会を迎える2040年を見据え、より持続可能な医療・介護提供体制への転換が求められます。

従来の4病床機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)のうち、回復期機能は急性期との連携やリハビリを包括的に担う役割が強化され、今後は「包括期機能」と位置づけられる予定です。

また、新たに「医療機関機能報告制度」が導入され、地域ごとの医療機関は次の4機能に分類されます。


・高齢者救急・地域急性期機能
・在宅医療等連携機能
・急性期拠点機能
・専門等機能


さらに、大学病院の本院などは、「医育・広域診療」を担う広域観点の医療機関として整理されます。

新たな地域医療構想は医療計画(医療法で規定される都道府県の具体的実施プラン)を包括する上位概念として定義され、医療・介護の資源配分、人材確保、連携体制の将来設計を一体的に進めます。2026年度から各都道府県で新たな地域医療構想の策定が本格化し、2027年度以降には新体制に基づく取り組みを段階的に運用開始するスケジュールが予定されています。


2
オンライン診療の法制化と拡大
新型コロナウイルス感染症の拡大を機に急速に広がったオンライン診療の法的定義が明確化され、都道府県への届出が義務されます。


3
美容医療への対応強化
美容医療の施術件数の増加とともに、トラブルや健康被害に関する相談が急増していることから、安全管理の実施状況や専門医資格の有無、相談窓口や連絡先について都道府県への報告が義務化され、必要な情報を国民に公表する仕組みが導入されます。


4
医師偏在対策の強化
近年、医師の地理的な偏在や診療科の偏在は、国民の等しい医療アクセスの確保や地域医療体制の維持の面で大きな社会課題となっています。
医師偏在指標(人口10万人に対する医師数、地理的要素、アクセス状況、医療機関の高齢化率、今後の人口動態などに基づく指標)が特に低い医療圏などについては、重点的に支援すべき「医師少数区域」と指定され、医師偏在是正プランの策定、支援区域の診療所の承継及び定着の支援、医師の待遇改善、勤務経験に基づく管理者要件の緩和などが進められています。 また、外来医師が過剰な地域においては、新規開業について抑制や調整を要請、勧告などを行う新たな制度の導入が予定されています。


5
医療DXの本格推進
全国で利用が広がっている電子カルテをはじめ、各医療機関が保有する患者の診療データを国や都道府県の情報共有サービス上で標準化と連携を進め、必要な際に安全に共有、参照できる仕組みが本格導入されます。これにより、患者が転院した場合や複数の医療機関にかかった場合でも、検査結果や診療サマリー、投薬歴、既往歴などが電子的にスムーズに共有、参照できるようになります。

また、収集された膨大な医療データは、氏名などの個人が特定されないように仮名化処理(特殊なIDで匿名化すること)を施したうえで、公的なデータベース上で利活用されます。

情報の集約地となる社会保険診療報酬支払基金は、「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」(仮称)に名称変更し、医療DXを担う中核組織として生まれ変わる予定であることが、これまでの検討会資料で示されています。新組織には、情報システム統括責任者であるCIO(医療DX業務担当の常勤理事)の新設やセキュリティ専門部署の設置など、組織ガバナンスやサイバーセキュリティの強化が計画されています。

まとめ

医療法の改正案は国会審議において成立すれば2026年から2027年にかけて順次施行される予定で、新たな地域医療構想、オンライン診療の拡大、美容医療への対応、医師偏在対策、医療DXの推進と多岐にわたる内容となっています。

皆さんの病院でも、これらの変化に対応するための準備が必要となるでしょう。医療機関機能報告制度への対応や電子カルテ情報共有サービスへの参加など、多くの医療機関に大きな影響が及ぶと予想されます。法案が国会で成立した後、詳細な省令や通知が示されますので、今後の動向に注目していきましょう。

病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!

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