虎の巻その19
病院会計 the入門編(下)
はじめに
こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。病院経営コラム「病院経営~虎の巻~」。前回の病院会計 the入門編(上)では財務三表のうち、【貸借対照表】(BS)を説明しました。今回は【損益計算書】と【キャッシュフロー計算書】について説明していきましょう。
財務三票② 損益計算書(Profit and Loss Statement)
まずは【損益計算書】について。英語のProfit and Loss Statement から「PL」と呼ばれています。
PLは一定期間の経営状況を把握できる計算表です。月次で作成している病院も多く、PLにより利益が出ているか読み取る事ができます。
(図1)は[医業収益]および[医業費用]の構成を表しています。
[医業収益]とは病院の本業である外来患者や入院患者へ医療サービスを提供して得られる収益の事を指し、[医業費用]はサービスを提供するために費やした人件費や材料費、設備投資や機器保守料など費用全般の事を指します。
利益=収益-費用、ですので[医業収益]から[医業費用]を差し引いた金額が[医業利益]つまり「病院の本業の売り上げ」を表します。
(図2)は[利益]と[費用]の分類を表しています。[医業外収益]は従業員給食費の収入や売店収入などを指し、[医業外費用]は本業の医業活動以外により発生する費用のことで、銀行から借りたお金の支払利息等を指します。
[経常利益]は、利息支払い後も利益が出ているかという目線で、特に銀行との融資交渉の際に重要視される項目になります。
財務三表③ キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)
最後は【キャッシュフロー計算書】について。英語のCash Flow Statementから「CF」と呼ばれています。
CFは、一定期間の資金活動の結果を、現金の出入りに焦点を絞って表したもので「資金繰り表」と呼ぶこともあります。現金の残高を確認する事ができる、病院の家計簿というイメージです。
CFは(図3)のように大きく3つで構成されています。
①医業活動(本業)に関する資金の増減
②投資活動に関する資金の増減
③財務活動による資金の増減
病院経営では投資活動による入金は少ないため、①の医業活動(本業)による資金増減部分が大半を占めます。この構造で計算していくと、④資金の増減を把握する事ができます。
CFではBSやPLでは把握しきれない資金繰越の状況をみる事ができ、①医業活動(本業)に関する資金の増減が赤字の状態でも資金調達ができていれば倒産する事はありません。一方でPLが黒字だからと安心していても、お金が払えなくなると倒産しかねない事態に陥ります。
極端な事例ですが、病床稼働が劇的に減少している中、紹介会社を利用して常勤医師を補充したとします。病床稼働が回復して一安心していたら、2ヶ月後に入金される診療報酬の振込日前に高額な紹介料を支払いしてしまい、職員の給与振込日に残高不足による資金ショートいう事も可能性はゼロではありません。
まとめ
- PLで病院の利益について把握する
- CFで手元資金の増減を把握し、PLが黒字でも手元資金不足するという事態を避ける
今般の新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により、ほとんどの医療機関が病床稼働減少や外来患者数減少により医業収益の減少の影響が出ています。
政府からは医療機関が利用できる助成金や給付金及び資金繰り支援制度が出され、制度の利用について検討及び実施されている医療機関も多数あると思います。この影響により足元の資金繰り状況や、融資制度及び融資額の算出、更には返済計画の策定には今回説明した会計入門知識がベースになってきますので、ぜひ活用してください!
「病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!