虎の巻その20
地域包括ケア病床を活用した病床再編実践(上)
はじめに
こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。病院経営コラム「病院経営~虎の巻~」。
昨年から続くCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大。国の施策による感染患者に対する診療報酬上の評価引き上げや、無利子・無担保の融資を利用している医療機関が増えています。
据え置き期間や金利の優遇を受けられる反面、元本返済の開始時期に向けて中長期経営戦略の見直しを求められるのは間違いないでしょう。
今回は計画見直しの主軸になる病床機能の再編について、特にニーズのある地域包括ケア病床の導入再編実践例を紹介したいと思います。
地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)経営視点のメリット
地域包括ケア病床は、2014年診療報酬改定にて地域包括ケアシステムの構築という目的で
①急性期からの受け入れ、②在宅・生活復帰支援、③在宅や介護施設からの緊急時の受け入れ
という守備範囲の広い機能を持った病棟として新設されました。当時、地域包括ケア病棟協会会長の仲井培雄先生による「地域包括ケア病棟は最大で最強の病棟」というパワーワードが印象に残っています。当社も多くの病院に導入をしてきて、経済合理性からも増収に寄与する「最大で最強の」病床機能であると実感しています。
①病床数
地域包括ケア病棟は施設基準上では「病棟単位」と「病床単位」の基準が設けられています。(図1)
入院基本料及び特定入院料の届出は「病棟単位」の基準が多く、病床機能の変更を伴う病床機能の再編には、施設基準上の人員配置やベッドコントロール運用など多くのハードルが存在します。
一方で病床単位の場合は、経営効率が最も良い病床編成のプランを立てる事が可能です。しかも少ない病床数から試験的に導入を開始できるので、現場スタッフの運用変更への不安感を軽減する事ができます。
人員配置で注意しなければいけないのが、入院管理料で届ける際の配置基準です。病棟内に地域包括ケア病床を設ける際、配置基準が高い方に合わせる必要があります。一般入院基本料(7対1)の病棟内に設置する場合は7対1の看護配置、療養病棟(20対1)の病棟内に設置する場合は、地域包括ケア病床13対1の看護配置に合わせる必要があります。
②病床単価
事業計画策定するうえで、必要な病床単価の変数が少ない事もメリットのひとつです。
DPC病院であれば疾患や入院期間により、出来高病院であっても入院期間による加算や検査・手術・レントゲンの出来高診療行為により日当円は大きく変動します。
地域包括ケア病棟(入院管理料)では、手術や一部処置など診療行為を除いて包括行為とされている為、日当円の変動が少ない病床機能なのです。
病床単価シミュレーション事例を紹介します(図2)。日当円の計画値に差違が少ないという事は、事業計画達成確度が上がり、現実的な計画策定の要素となります。
まとめ
- 地域包括ケア病床は、急性期からの受け入れ/在宅・生活復帰支援/在宅や介護施設からの緊急時の受け入れ、という広い機能を持つ
- 病床単位の機能再編により、経営効率が最も良い病床編成のプランを立てる事が可能となる
地域包括ケア病床を活用した病床再編実践(下)では、シミュレーション事例を紹介します。
「病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!