ユカリア STORIES
Withコロナにおけるパートナー病院の取り組み~高崎ハートホスピタル
※2022年5月9日株式会社キャピタルメディカは「株式会社ユカリア」に社名変更しました。
こんにちは、キャピタルメディカです。
医療やビジネスのゲンバから様々な情報を発信する『キャピタルメディカSTORIES』。
冊子『EUCALIA LIVE』(ユカリアライブ)の原稿を抜粋・再編集し、それぞれのパートナー病院がコロナ禍のなか、どのような病院経営・運営をしてきたのかをお届けする、パートナー病院紹介シリーズ。
今回は群馬県の「医療法人社団 前橋会 高崎ハートホスピタル」です。
※情報はすべて2021年10月時点のものです
医療法人社団 前橋会 高崎ハートホスピタル
[所在地] 群馬県高崎市中尾町1230番地
[診療科目] 循環器内科、心臓血管外科
[病床数] 99床(一般49・療養50)
[ホームページ]https://takasaki-heart.jp/
2019年は心臓カテーテル手術の安全な立ち上げ・拡充とともに、手術室改装に伴い、心臓血管外科の立ち上げに奔走した1年間でした。日本心血管インターベンション学会研修施設への認定、ステントグラフト実施施設認定、9月には手術室が完成し、人工心肺装置への投資は見送られたものの、当院外科での静脈瘤と下肢・腹部のステントグラフトの手術は合計154件、内科での経皮的冠動脈形成術(PCI)412件、下肢血管形成術43件合計455件と初年度カテ室・手術室立ち上げとしては順調に滑り出しました。
2020年は新型コロナウイルス感染症パンデミックに見舞われ、一般診療が制限され、心カテや外科手術が減少しました。その中で心臓リハビリテーション、不整脈アブレーション治療を立ち上げましたが、受診手控えで患者数は伸び悩み、 31床を急性期から地域包括ケア病床に変更しました。地域連携室を中心に地域包括ケア病床の稼働の安定化に奔走した1年となりました。中心的役割だった外科医が退職、事務部長が1年間で2回交代、看護部長は着任後半年で離職、経営を担う人材が安定しませんでした。看護師等一般職の離職も相次ぎ、療養病棟の半分を閉鎖するなど、人的に非常に不安定な1年でした。
2021年は指導により、地域包括ケア病床をコロナ受け入れ病床に転換しました。慢性的人的不足に悩まされながらも着実に補強、コロナ診療を開始することができ、地域におけるプレゼンス向上、循環器救急の要請も再び増加傾向にあります。看護部長はなお不在ながらも院長直下での看護部管理となりかえって風通しが良くなりました。緊急カテーテル治療の対応できる常勤医師が理事長である私一人のみという現状があり、当院の生命線である循環器救急医療体制の安定化が急務です。
経営改善に向けて
当院が経営に苦戦するのは、
1.地域からの評判がマイナスからのスタートであった
2.ハードが老朽化し定期的に大規模修繕の支出がある
3.慢性的な医師・看護師不足から非常勤や応援でまかなわざるを得ない
4.循環器内科治療適応の厳格化
があります。地域から「循環器疾患は高崎ハートホスピタル」と指名を受ける病院にならなければ、生き残れないと考えております。2019年1月以降新病院になってから入職した職員が8割を占め、実質的に新病院になっています。質の高く適正な治療、地域のニーズに応えられるよう引き続き尽力して参ります。
常勤医が4人しかいない弱小病院である当院の強みは、個人のPCIの技術と、心臓外科部長のステントグラフトの技術といった、医師個人のパワーに担われてしまう比重がどうしても大きくなっています。
2018年以降、PCIの適応が厳格化され、虚血の証明が治療適応に必須となりましたが、当院では、虚血の証明を含めて一度で診断から治療までできるよう、マイクロカテーテルFFR を使用した方法により大幅な手技時間短縮を実現しています。慢性閉塞の治療につきまして、当院での治療成功率は、冠動脈90%、下肢100%となっています。また高度石灰化に対するデバイスも導入しており、大学病院と引けを取らない治療を施行できています。周術期合併症も0.18% と安全に施行できています。
弱小病院ではスタッフ数も少ないからこそ、一人一人の実力に重きが置かれ、全体の技術の向上、質の高いチームプレーができる病院になっていくことが望まれます。現在はまだスタッフも日が浅く、途上段階です。安全な治療が提供できるよう、日々カテカンファや勉強会で教育に力を入れて参ります。
未来に向かって
今後の課題は、コロナ診療と並列して、循環器救急体制の構築が急務です。24時間365日救急を受け入れる体制を構築しない限り、地域からの信頼に応えることは難しく、当院が循環器病院として生き残ることは難しくなると思っております。安全で質の高い治療を提供すること、地域のためにどのように貢献していくか、全職員の幸せを希求して参ります。
雑草が生い茂っていた病院の花壇を職員有志が整備し、花を植えてくれました。患者様からも喜びの声を頂いております。コロナ禍であるからこそ、職員のつながり、患者様とのつながり、人と人のコミュニケーションを様々な工夫で意識的に創っていく必要があると考えております。病院を守り、盛り上げていく力が自発的に生まれてこそ、当院が本当に復活できる日だと考え、私はそれを エンカレッジできるよう心を砕いて参ります。
次回は北海道の「医療法人 北仁会 石橋病院」です。
ゲンバからは以上です。